2008年2月27日水曜日

罪悪感との戦い(1)

顧客に迷惑を掛けてしまった時の罪悪感に、どう対処するか。システム構築の仕事をする時に、大事な課題です。
罪悪感を強く感じてしまうタイプの人は、その感情にドライブされてハードワークにのめり込み、体か精神を壊してしまうという結果にハマりやすいといえるでしょう。
そこまでいかないまでも、何となく「何でオレがこんな目に・・・」「知るかよ!」的な感情に囚われ、モチベーションが下がったり、訳もなく顧客に悪い感情を持ってしまうこともあるかと思います(顧客だって同じことを言いたいんですが、そこまで気が回らなくなるんですね)。
罪悪感をあまり感じずに、モチベーションを維持できる人は非常にお得です。私も常日頃そうなりたいものだ、と思っているのですが・・・

以上の説明では、分かる人には分かるかも知れませんが、分からない人には何のことだかさっぱり分かりませんね。もう少し具体的に書いてみましょう。まず、迷惑を掛ける原因の方です。

【ケース1】「自分の書いたソースにバグがあってシステムが止まってしまった」時の罪悪感。

→ まあ、私に関して言えば、この場合に割とまっとうで適切な罪悪感が得られますね。なんと言ったって自分が書いたものが問題を引き起こして周りに迷惑を掛けた訳ですから、自分で責任を取りたい。
体調を崩さない限り、出来るだけ努力して修正して、必要であれば徹夜も辞さない、ということを、モチベーション維持しながら遂行できるような気がします。
当然、懲罰的な徹夜待機とか、出来るだけ無意味な作業は勘弁して欲しいということはありますが、それでもまあ仕方がないか、と納得できます。

【ケース2】「自分の部下(指導する後輩)の書いたソースにバグがあってシステムが止まってしまった」時の罪悪感。

→ 他人(隣接プロジェクト|他社|他チーム)のバグならば極端なとばっちりはないので、ケースからは除外します。こちらで再テストが発生したとしても「お互い様」というのが大人の対応でしょう。
そうではなく、直接自分が手を下したわけではないが、強めの連帯責任が発生するパターンです。
この場合は「後輩のミスの後始末を助けてやるいい上司(リーダー|先輩)」というイメージを無理矢理自分に重ねつつ、心の中では部下に「このやろー」と思いつつ、何とかモチベーションを維持する、といったところでしょうか。部下から一言「ありがとうございました」あるいは「ご迷惑をお掛けしました」と言って貰えれば「俺も昔は失敗したもんだ」などと余裕の対応できると思います。

【ケース3】「第三者が開発したが、それを引き継いでしまい責任を追うことになったプログラムに(略)」時の罪悪感

→ 前任者のソースコードを引き継いで管理しているようなケースです。
前任者が自分と同じ会社の人間かそうではないかによって微妙に異なりますが、前任者の顔が見えている分【ケース2】よりも気が楽ではないでしょうか。「やらなきゃならないことはやるけど、俺の書いたソースじゃねーし」みたいな感覚です。罪悪感がない分「なんで俺が」というのはあるかもしれませんが、周りも事情は理解しているでしょうから、そう無体なことは言われないような気がします。やらなければならないことを淡々と進める感じですね。

【ケース4】「第三者から提供されたが、こちらで責任を負わなければならないプログラムに(略)」時の罪悪感

→ ケース3と違い、第三者の顔が見えないパターンです。具体的にはプロダクトの障害や、多くの開発メンバーを束ねるゼネコンのリーダーやマネージャにとってのプログラム障害がこれに該当します。
プロダクトと一口に言っても、OS、Oracle、WebSphere、DB2、WebLogic などいろいろなものがあります。これらを扱っている、いわゆるインフラ構築SE、基盤SEが時折直面する障害です。障害が発生したけれども、それは自分やプロジェクトチームで作成した個所ではない。じゃあ誰の書いたコードで障害を出しているんだ、と言えばどこにいるかも分からない見知らぬ他人です。開発拠点はアメリカか。はたまたインドか中国か・・・。しかし、その障害の責任は現場で取ることになるのです。その責任の取り方(取らせられ方)も、誰が、という具体的な個人名ではなく、法人名になってくるのが普通です。法人名で個人が責任を取らされるわけです。
リーダーやマネージャーにとってのプログラム障害も同様です。一応自分のチームで作っていることになってはいるが、実際のソースなんか見たこともない(スキルを問題にしているのではありません。数千本のソースを全て見て理解できるわけがない)。せいぜい特徴的な設計とテストケースの概要と、これまで起きた障害を把握している程度、上等なプロジェクトマネージャと言えましょう。それでもプロジェクトで障害が発生して、大問題になる。「知らねーよ」とは口が裂けても言えない。これも、プロダクトの障害と似ていて、個人ではなく、法人名で責任を追及されてしまうパターンです。

【まとめ】
やはり一番きついのが4のケースでしょう。自分がコントロールできたわけでもない障害について、法人名で責任を問われるのですから。
障害が発生してがっかりしている顧客に申し訳ないと思いつつ(中には張り切っている顧客もいるかもしれませんが)、自身の罪悪感を何とかマネジメントしなければなりません。
恐らくは適度な罪悪感が必要なのでしょう。過度に思いつめると、行き着く先は肉体的/精神的ダウンです。あまりに罪悪感がなさすぎると、顧客からは信頼されなくなります。
顧客の立場は理解した上で、障害対応に必要なモチベーションは保持しつつ、不安に駆られた顧客からの、理不尽な対応は適宜断るなり、有効なものを逆に提案するなりできる、そんな適度な精神状態になりたいものです。

(続く・・のか?)

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