2009年5月20日水曜日

「クルーグマン教授の〈ニッポン〉経済入門」を読んだ

なぜに経済の本を読んでみたかというと、それは私が竹中平蔵を嫌いだからです。平蔵が経済通をひけらかすのが腹が立つからです。いい加減に卒業しろよ。私。まあそれはさておきこの本は面白かった。細かいことは分かりませんが妥当なことを言っているように思えた。山形浩生氏が端的にまとめていますが、要するに低金利状態でインフレ目標を設定して実質金利をマイナスにし、人々に貯蓄するよりも使った方が得だと思わせる、そうすれば金の流れがよくなって日本の景気は回復するんだ、そういったことだと理解しました。なるほど。明快だ。

山形氏は非常に頭がいいです。スパっと物事を割り切って、図式的に(かつ扇動的に)提示してくれる。胡散臭さは感じますが言っていることは基本的にまともだと思う。煽りトーンが珠にキズくらいで。

まあそれはそれとして、経済学素人の人文系の私がつらつら考えたこと。

経済学って怪しいですね。ああしたからこうなった。だからああすればこうなる。今の時代に成り立つモデルはこう。だからこのファクターを刺激してやれば、このナントカがドウコウする。それが正しいかどうかはやってみなければ分からない。

ああすればこうなる。種をまけば草が生える。雨雲が近付けば雨が降る。原因と結果ってフレームワークは、あまりにも自明なようで実は危険なんです。物事はそんなに単純じゃない。成功者が声高に叫ぶ。オレはあの時こうしたからこうなった。だから皆もこうすればああなる。なかなかそうはいかないんじゃないですかね。もちろん逆もまた真なり。あの時何もしなかったから今はこのザマだ。だからあの時ああすべきだった。原因と結果。過去と未来には複雑に思惑、文化、後悔、希望が絡んで解釈が生じる。原因と結果など所詮は事後的な解釈に過ぎないのです。ああ話がズレた。

確かに予測が当たることがある。モデルを立てて予測したら当たった。スゲーと思う。でも専門家の予測ってあまり信用しないほうがいいと思う。経験的に言って。

物理学ならば仮説を立てて実験して前に進んで行くことはできるのでしょうが、こと対象が経済だとその手法には限界があると思います。何たって実験ができない。検証が難しい。

経済それ自体は決して認識できない。うん正しい気がする。カントの「物自体」という考えはずいぶん手垢が付いて古臭くなりましたが、こと経済に対してはズバっとハマりますな。

要するにはたから見ていると、経済というわけのわからない概念に対して、経済学者たちがそれぞれの観点からそれぞれの小難しい理屈引っ張ってきて、好き勝手な予測立ててるわけですよ。それって学問か?真理はどこにある?

いや、経済学を否定しているわけではありません。政策を立てる上でも、もちろん資本主義に生きるわれわれにとっても経済学の意義は大きいと思う。

私が言いたいのは、そしてこの本を見て思ったのは、経済学者ってエラそうにいろいろ言ってるし、難解なこと言って毎度煙にまこうとしやがるんだけど、相当怪しいんだな、ってことです。もちろん、妥当なことを言っている人もいる。でも相当怪しいことを言っている人もいて、そんな人が政策やら日銀を動かしてるんだ、ということが分かる。

いやあ難しい時代ですね。経済学の用語でもってエライ人がベラベラしゃべってると、さすがの私ももう面倒臭くなって批判も評価もできなくなる。小泉もだまされる。怖いといえば怖い話です。

経済が大事ってのは分かるけど、人生それだけじゃないよな。う~ん。と言ってもいまさら詮無いことではありますが。ブータンにでも引っ越すか。人生に必要なのは愛と希望とサム・マネーだ。と言ったのは確かチャップリン。そうサム・マネーなんだよなー。一億の資産じゃないんだよ。まあチャップリンは最終的にはいっぱいお金をたっぷり稼いだのかもしれないけどね。金ばかりじゃ本当に夢がないよ。

私になりに考える不況の原因。社会の閉塞感とか先の見えなさが大きいと思います。確かに将来インフレがおこるとは思えない。缶ジュースの値段だってそんなに変わらないですしね。ゆえに貯蓄します。子供がいるから。これから金がかかる。マンションの修繕費もある。やっぱり貯蓄しかないっすよって感じです。金を使おうとは思わないっす。

それになんかセコく搾取されている気がする。自分の生活がどんどん他から食い物にされる気がする。全く油断ならない。何と世知辛い世の中か。

実際、今後給料が右肩上がりになるとか、自分の会社はつぶれないとか、自分は首にならないと考えている人は相当能天気ですよね。ってゆーか普通いないでしょうな。逆に高度成長期はそうだったんだなー。時代は変わるよ。

セーフティネットとか子供の将来の保証を何とかしないと、到底消費を享受する気分にはなりません。気分と経済学は別の話かもしれませんが。でも気分は政治と経済の上に成り立っているので、必ずしも無関係ではないでしょう。それに気分ってのは現存在の振る舞いを決める主要なファクターでしょう。

ド素人の私の感覚に過ぎない(しかも良く分かってないかもしれない)んですが、北欧みたいに高額納税者からばっちり税金取って富を再配分する仕組みの方がいいんじゃないかしら。う~ん。まあそのあたりは時間があったらもう少し勉強してみよう。

以上。
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