★★★☆☆☆:それなり
人間を人工的に生産することが可能となった社会を描いた近未来SF小説です。生産する人間の身体的特徴と階級をあらかじめ決定し、その後に徹底して思想を刷り込むことによって階級社会を固定化し、平和と幸福を実現したユートピア。そこに異端的な人が上流階級の血を引く野蛮人を連れて来て一騒動。とこう書くとドタバタSFみたいですがそうではなく、いたってシリアスな作品です。
現実にはあり得ないユートピアを描きながら、人間はどう生きたら幸福なのか。人間の社会はどうあるべきなのかを小説は問いかけているのです。ですがいまいちピンとこなかったです。正直。
なぜだろう。一つは小説としてのパワーの問題ですね。確かによくできた小説だとは思いましたが、1984と比べれば迫力が違う。それから価値観も違いますね。ドン・キ・ホーテじゃないけれど、いつの話だというような中世ヨーロピアンな肉欲否定とキリスト教的受難の発想。東洋の私には感情移入は厳しい。まあ面白かったんですけどね。
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