★★★★★★:アメリカを考える上では必読。読みにくいのが玉に瑕
ベトナム戦争という悲惨な事態の発生とその泥沼化を追った凄いルポルタージュです。硬い翻訳と政治家の名前の奔流に苦労しますが、そんなことはおかまいなしにグイグイ引き込まれます。間違いない傑作です。
ベトナム戦争?何か昔の話だよね。しかも日本には関係ないし。そんな風に思って気軽に読み出した私はすぐに考えを改めました。こりゃあ深い。普遍的な問題を提起するルポルタージュだ、と。
絶対に正しい自由な民主主義に対する絶対悪としての共産全体主義。冷戦構造と軍拡競争。その悪の組織たる共産主義政権がベトナムを飲み込もうとしている。そんな現状と乖離した安直なスキームと、アメリカ的価値観の押し付けに、最終的にはとんでもなく高い代償を払うことになりました。しかもアメリカが得たものは多くの若者の戦死と、世界からの批判だけ。
文官と軍官の衝突。隠蔽と偽装工作。見たいものしか見ない人たち。自分たちの方法論と成功体験に固執し泥沼にはまり込むエリートたち。戦局を拡大させたジョンソン大統領がエリートではなかったのもまた救いがない。その後を次いだニクソンも実に凡庸。
残念ながらベトナム戦争は、傲慢で優秀なエリートによる民主制も決して万能ではないという証左のようです。自分の見たくないものは見えないという人間の弱さと、権力への固執、それから驕りと油断。あまりにありふれた人間的な欲望が、悲惨な結果を引き起こす。エリートだろうが生え抜きだろうが、その事実は変わりません。
ゴルバチョフ回想録とこれを読んだ感想は、やはり投票による民主制というのは最低限のラインだなあ、というものでした。ファシズムは安直で手っ取り早そうだけど間違ったところに行ったら破滅は必定。人間は絶対に間違える。指導者が間違えた時に、一人一人がちゃんと投票で指摘しないと、民主主義は絶対に正常に機能しないと思います。自民党(&大企業&アメリカ)に任せてれば、なんのかんの言ってもそこそこの政治が行われていた時代は終わった。優等生っぽいことを言って恐縮ですが、これからは選挙を通じて一人一人が意思表示をしていかないとマズいと思いましたね。無関心と無介入だと、とんでもないところに連れていかれるかもしれませんぜ。小泉竹中がいい例で。
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