2009年6月12日金曜日

「1Q84」読んだ

最初は、疑心暗鬼だったんですよ。だっていきなりベストセラーになったから。

ベストセラーに傑作なし。ちゅうのは昔から私の持っている強固な偏見です。偏見だけど大体外れたことがない。

唯一外れたのがこれまた村上春樹の「ノルウェイの森」でした。

で、そんな偏見を持ちながら読んでみた1Q84。いきなりの村上節全開もわりと冷ややかに読み進めていたんですが、1巻の半ばあたりからもう読むのを中断するのがツライぐらい引き込まれてしまいました。

いやあ。全く凄い本でしたね。余韻がしばらく続きそうです。

(以下かなり荒削りな第一印象の羅列です。次に読み直した時はどのような印象を持つか比較するために個人的なメモとして残しておくものです。少なくともネタばれはないはず。)

この人の文体って「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」以降は微妙に冗長な印象があって、私はそれを手書きからワードプロセッサに変えたからだと推測しているのですが、ちょっと気になっていました。「アフターダーク」あたりから若干の試行錯誤が感じられつつも少し落ち着いてきて「海辺のカフカ」ではワードプロセッサという手段と文章とのリズムがずいぶん合ってきたな、と思っていました。

「1Q84」ではさらに不自然さが解消されて洗練されているんですけど、それがかえって村上春樹らしさを失っているように思いました。それはきっと冗長さと表裏一体のネチっこさが消えて、サラリと口溶けよく読めるようになったからだと思います。それがいいとか悪いとかは完全に好みの問題です。私は村上春樹が進化したと好意的に受け止めました。

それから文体から受ける印象ともリンクしますが「ねじまき鳥クロニクル」と比べると異様な世界に力技でねじ込まれる感覚が少ないです。

これにはおそらく二つの理由があって、ひとつは「1Q84」より「ねじまき鳥クロニクル」の世界がより個々のイメージが奇怪だから。だからねじまき鳥的世界に読者を巻き込むためにはパワーが必要だったのだと思います。それからもうひとつ。「1Q84」だって十分異様な世界であるわけで、やはり「1Q84」の語り口ならびに流れが洗練されていたために力技で引き込まれた感が少なかったのでしょう。

内容については特に書きません。不可解なシンボル群。暴力と性、父と母と子の関係。人が損なわれるということ。いくらでも深読みできる内容です。私はとりあえずは細かい解釈抜きで、できるだけありのままで不可解なイメージそのものを受け取りたいと思っています。
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