★★★★☆☆:志のあった日本人。読む価値あり
19世紀後半に大使として海外に派遣された、日本の一大外交団の日誌です。これが地味に面白い。
久米さんの問題意識は、今後日本という国が生き延びるためには欧米列強のよいところをどんどん吸収して発展して行かなければならない、という点にあります。そうしなければ日本は植民地化され、属国化してしまうかもしれない、という強い意思もそこには含まれている。
でもって、彼は彼なりにアメリカの現状を観察し(一巻)、考察を加えているのですが、これがいいのですよ。まっとうに是々非々で考えていて、当然久米さんの知識の限界や当時の時代制約はありつつも、アメリカのいいところ、悪いところ、特徴はなにか。日本ではどうすべきか。きちんと考えている。バランス感覚がいい。古びない。
例えば、以下のような記述がありました。(正確ではありません)いわく、
アメリカはイギリスとの独立戦争を経てから王権制や君主制に対する強い反感を持っている。彼らの徹底した民主主義信奉はそこから来ているが、その結果(いろいろあって)金持ちや有力な市民が政治に影響を与えるなど、若干の腐敗も見られる等々(書いててかなり自信がなくなりましたが、要するにしっかり見ているなあ、ということです)。
あるいはキリスト教や既成宗教を手厳しく批評するところとか、非常に興味深い。
天才的というわけでも、斬新でもないんですが、明治の日本人が見た当時の欧米というのは興味深いの一言に尽きます。
さっきから興味深いとか面白いとか伝わらないことばかり言っていて恐縮ですが、この地味な面白さというのはなかなか伝え難い。一巻だけ読んで終わりにしようと思っていたんですが、全巻読破するつもりになっています。
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