優れた小説です。若い頃に無理して読み切った記憶がありますが、その時はほとんど理解できなかった。30半ばを越えて読み直し、改めて大した小説だと感心しました。
しかし、時代が違いますね。百年以上昔のロシア貴族の方々ですから。感情移入も難しい。まして性が商品と化した現代日本の私からすると、アンナに共感するのは難しい。
並行して進むリョービンの物語しかり。共産主義にも、資本主義にも、宗教にも違和感を持つまっすぐな若者、と言われても、これまた共感するのは難しい。
と言いつつも、かなり引き込まれましたけどね。特にキティの出産シーンや、アンナの煩悶のモノローグなどは凄まじい描写力。さすが大作家です。
しかし、あれですね。最後にリョービンが自己の体験でもって神の存在を確信するところは、あれはカントですね。理性ではわからんのや、と。我がうちなる道徳律や。真善美や、と。カントの信仰は結局のところ不可知論じゃないか、などと言われたりもしますが(多分)そうでもないんじゃないかね、などと思いました。ま、アンナ・カレーニナとは関係ありませんがね。
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