2008年11月26日水曜日

痛恨の片思い

一方的に仲良くしたい、親しみたいと思っていろいろアプローチしても、どうも相手のほうはその気になってくれないというか、うまく行かないということはよくありますが、私の場合、そのお相手は豚バラブロックの大きなかたまり肉でした。

昔からどうもこのほとんど脂身じゃねーかコノー、という巨大なかたまりに対しては、憎しみと共に愛情、あるいはほのかな憧れを抱いていたのです。憎たらしい脂身だけれども、いったいどうやったらこれを美味しく頂けるんだろう。スーパーでカナダ産やアメリカ産の豚バラブロック肉を見るにつけ、なんだか挑発されているような煽られているような気がしてならなかったのです。

妻は飽和脂肪酸とか動物性油脂や加工油脂とかを嫌がるので、ブロックだろうが薄切りだろうが豚バラ肉を嫌います。実は私だって脂身はさほど好きではない。豚ならバラよりヒレ肉。鳥ならモモ肉よりもムネやささみを好むほうです。しかしどうにもこの白い脂のかたまりは、私の本能を突き動かしてしょうがない。DNAレベルで揺さぶられている気すらしてしまう。

一部で話題の飽和脂肪酸。体によくないらしいけれども、沖縄では皮付きの豚ばら肉を泡盛で煮込んで黒糖としょうゆで煮付け、美味しい角煮を作っているらしい。つまり、沖縄では豚バラの角煮が食べられている。しかるに沖縄は長寿で有名である。すなわち豚バラの角煮を食べているにも関わらず、沖縄の人は長生きする。つまり、角煮を食べてもそれほど体に悪いことはないかしんない、という三段論法がここに成立するわけです。

昔テレビでやっていた「どっちの料理ショー」でも、よく肉からタラーリタラリと垂れる脂を見て歓声が上がっていたような気がします。しかも脂をたっぷり口に含んで「ジューシーで美味しい!」とか「甘~い」とか。脂舐めてうまいとは何ごとであるか、と半分怒りながらも見ていた私でしたが、豚ばら肉のレシピを見ると「最初にしっかり焼いて余分な脂を落とす」とか「酒を入れたお湯でしっかり茹でてから調理する」という記載があり「余分な脂が抜けて*サッパリした*美味しい豚バラの角煮」というものが存在しているかのように信じてしまい、いつかはそのような角煮を作って見たいものだ、などと考えていました。

で、一度作ってみたんですよ。もうしばらく昔になりますけど。しっかり焼いて脂も落としたし(60%くらいの大きさに縮まった)、味つけする前にお湯で1時間以上茹でたりもしました。でも、結果はやっぱり豚の脂。脂は脂。冷えるとにっちゃり。確かに美味しかったですけどね。でもニチャニチャ。

これに懲りてしばらくこの人には手を出さなかったんですが、またこの間また挑戦してみたのです。塩豚に。しかも塩豚を燻製にして自家製ベーコン を作ってみようと。よりによってというかアチャーという行為ですが、片思いから逃れられない私。恋は盲目です。

結論から言いますと、これが大失敗。いや、多分料理としては正当な手順でそこそこ正当な結果が得られたと思うんですが、その出来上がったものがまさに煙で燻されたしょっぱい豚脂。もう一口で勘弁って感じでした。頑張って半分ほど使いましたが、一週間ほど経過して消費できなかった残りは迷わずゴミ箱へダンクシュート。普段は食べ物を捨てるなんてことはしないんですよ。賞味期限+1、2日経過のものは平気だし、ものによっては味噌や塩に漬け込んで延命を図り、ちゃんと消費する性格です。食べ物は粗末にしたくない。でも塩豚の燻製はアウトでしたね。もう二度と作らない。

というわけで、ようやく豚バラの呪いから開放されたと思った私ですが、この前、業務用スーパーで巨大な豚バラかたまり肉(2,3kgもあろうかというやつ)を見かけて瞳孔を拡張しながら足を止めてしまいました。なんて懲りない私でしょうか。もう二度と自分で買うことはないでしょう。ないと思います。しかし、この豚バラのかたまりは、当分の間私を悩ませ続けるに違いない。巨大な生白いエロティックな脂肪の塊から目を離すことができないまま、私はそのように思ったのであります。

以上。
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