2009年4月16日木曜日

エンジニア35歳定年説について

30過ぎてから何となく気にしていました。35過ぎると何か世界が劇的に変わるのかもしれない、という漠然とした不安がありました。人生の一つの区切りとして。

しかし30も半ばを過ぎて振り返ってみても当然というか何というか、別に35才という分水嶺で何かが大きく変わるというわけではありません。当たり前ですね。むしろ、40代半ばまでは間違いなくエンジニアとしてやっていくだけの能力(体力はさておき)があるだろうな、という気すらします。50代まで行けるかもしれません。50になってもあと10年イケるな、と思ってるかもしれません。

なぜか。答えははっきりしています。私の関係するシステム系の仕事では、先端的な数学理論や高度に数学的な方法は必要がないからです(この辺論理は大丈夫かな)。ええと、別の角度から言うと、文章を論理的に、時系列に沿って、整然と書く能力があれば、私がか関わってるエリアのプログラミングなんて組めるから。それに加えてUNIX、ミドルウェアの経験があれば、システムは組めるから。管理も運用もできます。

もちろん学習能力や学習意欲は衰えて行くでしょう。しかしそこは訓練と習慣の改善で何とかなる範囲と思います。野球選手じゃないので150kmのスピードに体がついて行かなくなるとか、それほどシビアな話ではありません。希望的には衰えた分は経験でカバーできると思いたいです。

※マネジメント系のタスクは70歳でもたぶんできるので考慮しません。

じゃあいったい誰が35歳定年説などと言い出したのか。

まあ経営者やら人事でしょうね。

なぜ、そんなことを言い出したか。

そりゃ、35歳のエンジニアは会社から見れば利益を出せない存在だからでしょう。

35歳で年収600万の人を想定しましょう。中企業のエンジニアですね。この人が稼がなければならない金額はまずこの人の年収分、600万になります。それから机、PCなどの備品といった経費、オフィスの地代家賃アタマ割り、それから間接部門の人の給与、偉い人たちの給与アタマ割り(いわゆる固定費)を足していくと、優にこの人の売値に対する原価は1,000万を超えることが分かるでしょう(厚生年金は会社と折半という建前なので、厳密には会社のコストとなりますが誤差として考慮外)。

さらに会社は利益を出さなければなりません。すなわちこの人を1,000万以上で売る必要があります。月に80万で売ると会社にとっては赤字です。最低限、月に90万で売る必要がある。

中小企業のSEはなかなか一人90万では売れません。なので、35歳定年説が出てくるのでしょう。35歳になったらSEとして売っても利益にならないので別の肩書を付けて売るわけです。SEはやめてもう少し金の稼げる肩書きを持てるようになれ、と。当然マネジメント一人では売れません。だからマネージャーとワーカーというスキームで若い人間を合わせて売る。若い人は人件費が安いので多めに利益を出すことができます。

経営者からすれば人件費が高くなるのにSEを続けてもらっちゃあ利幅が薄くなって困るよ、ということです。だから35歳定年説が出てくるのだと思います。

まあ別に何でもいいんですけどね。

しかしPG・SE・マネージャーという価格階層はおかしいですね。すごいPGもいる一方、ダメなマネージャーなど実に多い。そこそこのマネージャーですら珍しい。今はまだ希少価値があるから高く売れるって訳でしょう。すでにそれも怪しくなってきましたけど。

他にも問題があって35歳超えてマネージャーになって現場感覚を喪失しながら何年もマネージャーをするしかなくて、その結果「マネージメント」しかできない人が実に多いという事実です。マネージャーにはモノは作れません。そして、そのような人がどんどん偉くなり、人件費が高騰し、下っ端にしわ寄せがくる。この業界、そんな構造が容易に見てとれます。

もう少し踏み込んでいえば、そのようなエライ人たちが既得権益を得てしまっている。「うまい汁を吸ってる」コミュニティの聖域が出来上がっている会社も多いのではないでしょうか。現在は末端の若手~中堅エンジニアが一番搾取されている状況が多いと想像します。では今後どうなってゆくのか。

現在はおそらく団塊Jrによって仕事や会社が支えられていると思います。またこの世代はITバブルの時代とも重なっていて、層も厚く比較的優秀な世代です(異論は認める)。しかし彼ら(私含む)はどんどん年を取って行く。一方で既得権益層が引退するペースは相対的に鈍いでしょう。団塊Jrを中心とした世代にとって「年を取ったらマネージャー」というパラダイムが変わらないと、システムを現場レベル(体感レベル)で把握できる人がどんどん少なくなることになります。そうなるとどうなるか。先のことは分かりません。まあできるだけ勉強して体を壊さないように生きてゆくしかないですね。どうもある意味マズい。ある意味面白い方向に行ってるような気がしてなりません。
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