2010年1月6日水曜日

吉田茂「回想十年」三巻目

★★★★★☆:昭和~平成の自民党がよく分かる

安保体制は冷戦時代のスキームなわけですよ。つまりアメリカに軍事で協力してもらい、日本は後方で支援するという体制。

さてさて、アメリカが何でそんな面倒くさい日本を守るなどという役割を引き受けたか。経済的にはまだまだの焼け野原日本です。貢献など全然期待できない。当初アメリカは日本に、さっさと軍事力を増強して、自分で自分の国を守れとしきりに急かしたらしい。どうせ極東のことだし、日本を復旧させるためのコストや駐留コストもバカにならない(日本の負担だけでは全然まかなえない。アメリカも相当自腹を切っていた)。独力で国家社会を守ってね。それに対抗したのは吉田翁。終戦まもない日本の国力では軍備に金をかけられない。増強はムリだ。だからイザというときにはアメリカの軍事力を提供して欲しい。日本がソ連、中共に進攻されると東アジア全域が共産圏に入る可能性がある。欧米にとっても日本の防衛は戦略的に重要なはずだ。

それが日米安保。アメリカに強く依存してしまうスキームではありますが、大戦が終わっていたとはいえ、ソ連の脅威が身近に迫っていた冷戦時代(朝鮮戦争もあった)には妥当としかいいようがありません。結果的に日本が高度な経済的発展を遂げたことを考えても、吉田翁の狙いは的中したといえます。大したものです。

しかし今はどうか。冷戦はとっくに終わっています。思想的対立ではなく、金と欲望を軸に世界が動いている。確かに中国は軍備に相当金をかけていて、その意味では脅威には違いありません。しかし、巨大な半自由主義経済圏としての中国が日本と対立したとして、あるいは中国がその軍事力を背景に強圧的な外交を仕掛けて来たときに、アメリカの軍事力がどれほど頼りになるか。冷戦が終結した現在、安保体制はもはやその役割を終えつつあるという認識も、あながち間違いではないと思えます。もちろん、だからといってアメリカ軍さようなら。これまでお世話になりました。とあっさり関係が解消できるわけもありませんけどね。アメリカは依然として重要なバートナーであることには間違いありません。個人的には民主党のやや先鋭的な方向性には賛成なのですが、やはりアメリカと中国のあいだで慎重に、バランスよく舵を取っていくことが理想なのではないか、とも考えます。

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