2010年3月9日火曜日

ロマノ・ヴルピッタ「ムッソリーニ」中公叢書

★★★★☆☆:イタリア人の見たムッソリーニ。第二次世界大戦時の日独伊の体制がファシズムという言葉で一括りにされたりしますが、ものごとはそんな単純ではないといのが分かります

ムッソリーニ。名前は聞いたことあるけど。詳細は全く知りませんでした。ファシズムという言葉にもリアリティなし。先入観ほとんどなし。

読んでみると面白い。ムッソリーニさん、なかなかカッコいい生き方をしたようですね。国のことを真剣に考えていた。ファシズムといえば全体主義、独裁主義の代名詞ですが、実際にはムッソリーニは止むなく独裁体制を取っただけであって、むしろ直接民主制を目指していた模様。反対派の弾圧もかなり甘かったようです。マキァベリズムとすらも言えません。女性関係以外は清廉で使命感に燃えた立派な政治家だったようです。

私の理解では、ファシズムとは直接民主制を土台としたエリートによる寡頭政治。エリートといっても、民衆への教育を通じて優秀な人を育てるという健全な発想です。その意味では日本の官僚システムも一種のファシズムですわな。昨今の官僚が優秀かどうかはさておき。

男尊女卑を言明しているあたりは現代には受け入れられないでしょうが、特にそれほど変な思想とは思えない。別にいいんじゃないの。ムッソリーニ的ファシズム。ヒットラーのファシズムはヤバイですけど。何ごとも運用次第です。

それから日本、イタリア、ドイツが戦争を始めるに至った経緯や、ドイツの考え方も興味深い。やはりこれらの国はイギリス、フランス、アメリカの圧力を受けてワリを食ってたんですね。しかし、ドイツには黄禍論が根強く、アメリカを敵に回まわしたくなかったということもあり、日本の参戦を喜ばなかったとか。逆にムッソリーニは日本のサムライ文化に強い親近感を抱いていたとか。歴史は面白い。

ファシズムで思い起こされるのはチャーチル(だったか)の言葉。「民主主義は最悪の思想だが、それよりましなものがない」という旨の警句です。この人、ムッソリーニを高く評価していたらしい。しかし、ファシズムよりもダメだが民主主義を選ぶ、という判断は正しいセンスだと思います。寡頭政治はいつかは腐敗するんだよね。多分ね。

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