2010年8月12日木曜日

帰省2010/8

実家の一階で寝る時、やはり思い出すのは受験シーズン。受験を終えて家を出た。だから、最後に実家で暮らした受験シーズンが最後の、ありありとした記憶になるわけで。

当時は二階に私の部屋があったのですが、比較的暑いのと、両親妹の部屋があったのとで、私はもっぱら一階の床の間で勉強/就寝しておりました。もう一人になりたい。一人にしてくれ、と。受験の重圧で怒り爆発寸前でしたね。なんでこんな下らない勉強せなあかんのや。将来の不安と、目前の受験に対する不安とで、もうぐちゃぐちゃな時代でした。今思ってもあんなに辛い時代はなかった。でも、あの頃は一瞬一瞬を真剣に生きてました。あの時ほど真剣に悩んで、苦しんでいた時代はありません。懐かしく思い出すけれど、もう二度と戻りたくはない。まさに戦争。戦争という言葉が、単なる比喩ではない気がします。見えない何かと生死をかけて戦っていた気がする。

ああ。

その頃に私を癒してくれたのが「魔女の宅急便」でしたね。いや、この映画のターゲットは明らかに女の子だったけどさ。家を出て自活しようとする女の子とこのムサい俺様が否応なくかぶったね。俺もキキと同じだ。自分の生きる道を探す途中にあるんだ、と。不安。ウルスラ。パン屋。懐かしいな。キキと自分がダブった受験シーズン。商店街の映画館で見たっけ。よく覚えてないな。

ジブリと言えば「天空の城ラピュタ」。入れ替え制などない時代。寂れた場末の映画館に、朝の最初の回から入って、夕方まで見たもんだ。安っぽいシートの匂いを思い出す。懐かしい。5回以上は見たのではないかな。夢にまで出てきた。懐かしきラピュタ。

魔女の宅急便は、18の男の子が全面的に感情移入できる作品ではありませんでしたが、どこかシンクロするところがあったのでしょう。納得行かないまま、幾度か見たように思います。というか作品への思い入れはあった。自分は何になろうとしているのか。どこへ向かおうとしているのか。

その受験時代に私を引き戻す、我が実家の一階の畳の匂い。青臭い、イグサの香り。未だに20年近く前の残滓を嗅げるような気がする。その匂いを嗅ぐと、昔の不安と怒りと焦り、それでも何か開き直ったような若さに一瞬だけ戻れるような気がする。

そして今。

ものすごい怒りと開き直りが共存していた20年前にタイムスリップすると、あの時の苦しみを思えば仕事なんか大したことないじゃないか。会社なんかどうでもいいじゃないか。大事なことは、他にいくらでもあるだろう。そんな風に昔の自分に励まされるような気がします。苦しんでいた未成年の若造=自分。

結局、昔の苦しんだ時間が肥やしになっているわけです。それでいいんだよ。充分上手くやってきたじゃないか。帰省してイグサの香りを嗅ぐたびに、昔の自分に褒められている、そんな気がします。

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