2009年9月17日木曜日

アメリカ医療改革の不思議

アメリカには日本のような公的な健康保険制度がなく、民間の会社がその役割を担っているということ。そして企業の福利厚生として健康保険が提供されるケースが多く、その場合は失業すると自動的に無保険になること。そしてアメリカには無保険者がウン?万人いること。改めてその事実を確認すると驚いてしまいます。

私の感覚(恐らくは日本の中産階級の平均的な感覚)では、何はともあれ保険証というか、保険証がないとエライことになる。とにかく写しでいから持っとけレベルの大事なモノなわけで、保険証がないという状況は殆ど想像できない。というわけでオバマさんの仕事も順調に行くんじゃなかろうか、だって健康保険証があるのが当たり前と思っていたらとんでもないんですね。

時折耳に目にするニュースによると医療改革に反対する激しいデモが起こったり、オバマさんもかなり苦労している様子。

一体これはどういうことだろう。そりゃあ脳天気に日本人の感覚を持ち込んでるわけで驚くのも当たり前。いや、そうかも知れませんが、それにしてもなお。だって保険証がなくっちゃ医者になんか掛かれませんよ。一体誰がどんな理由で反対しているのか。

まず思いつくのは既存の業界の反発です。そりゃあ国が安価な健康保険を運営し始めたらたまったものじゃないと思います。

しかしそれだけじゃ大きなデモは説明できない。もう一つ考えれるのは、健康保険なんかさほど嬉しくないとアメリカの皆さんが考えている可能性です。これは分からないでもない。日本人であれば、健康保険の大切さはもう小学生の頃から刷り込まれているわけですが、じゃあ健康保険が無かったらどうなるのか想像してみると、そこそこ健康な独身者であれば、払う保険料と補助される医療費を差し引きすると赤字になるのではないでしょうか。とすると、健康保険に入らないというリスクを取る代わりに金を貯めるというオプションだってあり得る訳です。

いや。しかしこれもまた激しい反対デモが行なわれる理由にはならない気がする。イヤなら加入するな、という話ならば。

でいろいろ記事を読んでみると、どうやらアメリカの皆さんは健康保険制度に社会主義的な匂いを嗅ぎ取ってるらしい。だから一部の人が強力に反対してるらしい。そんな状況が見て取れました。

国が税金を使って安価なサービスを行うとか、税金を使って弱者に補助を行うとか、そういう構造に強いアレルギーがありそうです。まあ、アメリカ人と突っ込んで会話する機会なぞありませんから、新聞経由の推測に過ぎないですけど。

その想定が正しいとすれば、アメリカというのは実にしんどい国だなあ、と思えます。弱肉強食が当たり前。資本主義万歳。競争原理と自由と自己責任が深く根付いているのでしょう。個人主義ここに極まれり。

一方で寄付とかボランティアの精神が根付いているのが不思議です。これは政府を信用しない代わりに自分で、民間で出来ることをしよう、という表れかもしれません。

いずれにせよ、これもまたしんどい発想だな、と思います。まあ人の好きずきかも知れませんけど。

この医療改革騒ぎから見えてくるのは自信と能力と運に恵まれた人間が大成功する一方で、競争に負けた人は不安定だったり質が低かったりする生活を送らざるを得ない厳しい社会を、積極的に肯定する人たちの存在です。

ちょっと長くなりそうなので、一旦終了。


0 件のコメント: